新刊検品;「謎の探検家菅野力夫」(若林純 著,青弓社) 山本握微 諸般の事情で、平日はほぼ毎朝、開店したての書店へ行く。 そこでは荷解きされ、仕分けられたばかりの、新刊が並べられている。まだ多くは、棚に入りきっておらず、作業用の台車に積まれていたりする。 今どれくらいだっけ、平日1日に250点近くの新刊が発行されている。所謂「新刊洪水」という状況で、売上は年々下がっているのに、新刊だけは溢れかえっている状態。 こうした状況下、書店の棚は常に入れ替わり、酷い時には一瞬も棚に入らぬまま返品されることもある。 学生の頃、古書店ばかり利用していた僕は「新刊買うなんてアホや」と思っていたのだけれど、こうして日参していると、新刊の切ない魅力が、少しだけわかる。 普通の本屋、というのは実は全く普通でなく「新刊書店」である。勿論、古い本もおいてあるけれど、ほぼ全て「稼動」している商品だ。「本」全般から見れば極めて特殊な形態のひとつでしかない。 前置きが長くなりましたね。 「新刊検品」と題しまして、この新刊大洪水の中から気になった本をご紹介申し上げます。できれば、そのまま水没し、藻屑となりかねない本を、特に。 また、気になっただけで、僕は本を滅多に読まないし、まして買わないので、ただの第一印象を頼りにしています。 では一発目。 (早速趣旨と若干外れて少し発売から日が経つけれど) 「謎の探検家菅野力夫」(若林純 著,青弓社) この表紙と題名なら、もっと話題になってもよさそう。 絵葉書コレクターの間では有名らしい明治期の探検家「菅野力男」を紹介した一冊。当時はもっと、大衆の間にも知られた有名探険家だった様子。だが、時代の流れに忘れ置かれた。 当時、探検家それ自体の職業というのは世間に認知されていて、今でも名が残る人はいる(僕はもとより知りませんが)。菅野は、むしろこの時流に乗ったX番煎じだったが、絵葉書と講演会といった各種メディア戦略を駆使することで一定の名声を築いた。 こんなインパクトのある表紙の本も珍しいけれど、沢山入荷するような性質の本じゃないから、折角の表紙をお披露目せぬままそっと棚指しにされている店が殆どでしょう。まさしく一見の価値があるので、是非、問い合わせて手にとってみてください。